シンガポールから帰ってから読み始めた沢木耕太郎さんの深夜特急も5冊目に突入してしまいました。
6巻で旅の終着点のロンドンに着いて作品は完結するので、慌てずにゆっくり読んでいこうと思いながら、彼の旅と同様に先へ先へと読み進めてしまいます。
5巻では、イランからトルコのイスタンブールへと旅は続いていきます。
この本を読み始めてから、本の中の地図を見ながら位置を確認することはよくありましたが、実際の国の様子や建築物を映像で確認することはありませんでした。
1巻の香港、マカオはかつての旅行を思い出しながら読み、2巻はシンガポールを懐かしみながら読んでいました。
それ以降は、文章に書かれていることを頭の中で想像しながら、インド、ネパール、シルクロードの話に旅情をかき立てながら読んでいました。
彼が、トルコのイスタンブールに着き、目の前にくっきり浮かぶ6本の尖塔をもつ巨大モスク「スルタン・アーメット・ジャミイ・ブルー・モスク」を茫然と眺めるシーンを読んで、私も急にその姿が見てみたくなりました。
壮大な景色です。
彼は偶然にこのモスクを真っ正面からみえる安ホテルに宿泊したらしいのです。
借りた部屋からは、ブルー・モスクばかりでなく、その向こうには海が見えたと書かれていますから、おそらくこんな景色が窓から見えたのでしょう。
この深夜特急に魅せられて後に続いたバックパッカー達もこのホテルに宿泊を試みたことでしょう。
沢木さんは、本の中で写真をあまり撮らなかったと言っています。
フィルムはたくさん持参されたようですが、カメラを構えることにより、風景によって喚起された思考の流れが中断されたり、人との間に生まれかかった心理的なつながりに変化が起きてしまう危険性も少なくないと書いています。
私などは、これはと感じた写真が載せられていると、ますます彼の見たものに対して共感や憧れが沸き、読書の楽しみが増すのにと思ったりしましたが、多分、それは違うんですよね。
本を読み、想像力を働かせ、自分もこの目で確かめたいと思う若者のバイブルになっているのは余分な先入観を与えていないからなのでしょう。
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