夕刊が届くと真っ先に小説「無花果の森」を読みます。
少し前は主人公泉と週刊誌の記者鉄治がお互いの境遇を告白し、身を隠して生きている者同士の連帯感や徐々に心を通わせていく様が丁寧に描かれていました。
束の間の恋人同士のようなひとときを読者の私も微笑ましい気持ちで読んでいました。
泉が映画監督の夫との暮らしの中で味わうことができなかった安らぎと幸福感を鉄治によって得られ、このまま二人でひっそりとこの岐阜県大崖で暮らせたらどんなにいいことかと泉同様願っていました。
ついに話が大きく動き、二人が一緒にいる現場を鉄治の恩人同様の男性に見られてしまいました。
その男性は、心は女性で鉄治に対して愛情を持っています。
今日の話は、嫉妬に狂い、二人に罵声を浴びせる場面でした。
鉄治が身を隠して生きていくのに彼は仕事と住まいを提供してくれたので鉄治としては事を荒立てたくないはずです。
やっかいな展開になりました。
夫から逃げ出してきた泉には捜索願がでているかもしれませんし、鉄治は覚醒剤疑惑で追われている身です。
世間の目を逃れて生きていく者にとっては、他人との関係はできるだけ持ってはいけないのです。
お互いに百も承知の事だと思うのですが、そんな境遇だからこそ束の間の幸せなひとときを求めてしまったのかもしれません。
今以上の困った展開が待っているのか、かすかな希望がみえてくるのか、全く先が読めません。
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